スペインを代表する天才建築家、アントニ・ガウディ。スペインのカタルーニャ地方出身の彼は、パリの博覧会に作品を出品したことをきっかけに、スペインの大富豪であるエウゼビ・グエルの支援を受けるようになります。それが縁となり、グエルが暮らしたバルセロナに数多くの個性的な建築物を遺しました。それが世界遺産に認定されている「アントニ・ガウディの作品群」
ガウディの代名詞、サグラダ・ファミリア
ガウディ建築の代表と言えるのが「サグラダ・ファミリア」。バルセロナのシンボルとして多くの観光客を集める場所で、訪問する人々は国内外を合わせて年間300万人近くと、スペインでも最大の観光スポットとしても知られています。
建築が始まったのは1882年。すべて個人の寄付によって建設される協会として計画がスタートしました。しかし初代の建築家が意見の対立から辞任、代わって指名されたのが当時はまだガウディでした。ガウディはこのとき31歳。
ガウディはサグラダ・ファミリアの建築をライフワークと考え、設計を引きうけてからの43年間はほとんどの時間を教会で過ごし、建築のプランを練り上げたといいます。
ガウディが死去したのは1926年。しかし設計図などは作らず、すべて大型の模型によって建築を行っていたこと、それらの模型はスペイン内戦によって失われたこともあり、ガウディの死後はもはや完成は不可能という意見すら生まれました。
しかし、ガウディの弟子や実際の施工を担当した職人による口伝えと言った形で建築は続行。
かつては永遠に完成しない建築物と言われていましたが、IT技術や3Dプリンターの発達により工事の進行は加速、さらに世界中から集まる観光客の入場料収入が増加したことで、現在ではちょうどガウディの没後100年に当たる2026年には完成するのではないかと言われています。サグラダ・ファミリアの見どころは数多くありますが、まず「生誕のファサード」と「受難のファサード」です。
ファサードは「正門」を意味する建築物で、サグラダ・ファミリアの東に位置する「生誕のファサード」はイエスの誕生から始めて説教を行うまでのエピソードが、東に位置する「受難のファサード」には、最後の晩餐からキリストの昇天といった生涯にわたる物語が彫刻によって説明されています。
あまり知られていないことですが、世界遺産として認定されているのは「生誕のファサード」と「地下聖堂」だけです。これはガウディが直接手掛けたことが理由と言われています。そのため、サグラダ・ファミリアを訪れたときには、「生誕のファサード」だけは絶対に見逃せない場所だということができるでしょう。
不思議なスポット「グエル公園」
ガウディの建築群の中で、サグラダ・ファミリアに次ぐ知名度を誇るのが「グエル公園」です。これはガウディの後ろ盾でもあったエウゼビ・グエルの依頼によって作られた公園。当初は、19世紀のイギリス田園都市を思わせる分譲住宅として設計がスタート、ガウディ自身もこの場所に家を購入したと言われています。
しかし規制によって敷地の六分の一しか建物が建てられない、敷地内の木を伐採できないなどによって販売は難航、結局は60件の住宅のうち、売れたのはたった2件だったとか。
やがてエウゼビ・グエルの死によって資金不足となり工事は断念されますが、その後バルセロナが市として正式に購入、公園として一般公開されることとなりました。
グエル公園で最も有名なのは、正面の門から入ったすぐ近くの場所にある階段。下には洞窟が作られていて、有名なモザイク模様のトカゲの噴水もこの場所に設けられています。
一方、あまり有名ではないもののぜひ見ておきたいのは「門番小屋」と「管理事務所」。これらはいかにも退屈そうなネーミングとは裏腹に、土壁と曲線を利用した白い屋根と窓枠の「お菓子の家」のようなデザインです。また「管理事務所」には高く伸びた塔の上に二重の十字架が設けられ、グエル公園の「もうひとつのシンボル」とも呼ばれています。
さらに公園内にはガウディが購入した家を改装して作られた「ガウディの家博物館」も設けられ、ガウディが設計したインテリアや、ガウディの仕事場、建築物の模型なども展示されているので、ガウディに興味がある、建築を学んでいるという人にとっては、いくら時間があっても足りない場所といえるかもしれません。
ひとつずつゆっくり見たいガウディ建築
サグラダ・ファミリアやグエル公園以外にも、ガウディの作品群は魅力的なものばかり。例えば、バルセロナにある「カサ・ミラ」は、マンションとして作られた建物で、今でも実際に住んでいる人がいる面白い建築物です。また、屋上はタイルや象牙、陶器などによって作られた装飾があふれる不思議な空間になっています。
他にも「グエル邸」、「エウゼビ・グエル協会」「カラ・バトリョ」「カサ・ビセンス」など、どれもこれも個性的で、現代でも決して古さは感じない建築が並ぶ「アントニ・ガウディの作品群」。バルセロナを訪れるときには見逃せない観光スポットです。