負の世界遺産が存在することをご存じでしょうか?
通常、世界遺産といえばプラスのイメージが大きいと思いますが、南アフリカにある世界遺産「ロベン島」は別名「監獄島」とも呼ばれています。
このロベン島は何故、負の世界遺産と呼ばれているのか、そこにはどんな魅力があるのかご紹介していきます。
人類の負の遺産、ロベン島
ロベン島があるのは南アフリカの西ケープ州ケープタウンのから沖合へ約12キロメートル離れた場所にあります。
この「ロベン」の名前の意味は「アザラシ」という意味でオランダ語から取られています。
このロベン島の周囲の潮は流れが早いのでオランダ植民地以降は「難病患者隔離施設」や「流刑地」として利用されてきました。
現在、ロベン島はロベン島教会を以外の全てを政府が所管し、島を全体的に博物館として整備しています。
監獄島と呼ばれる理由
何故、ロベン島は監獄島と呼ばれていたのでしょうか?
それは反アパルトヘイト(有色人種隔離政策)運動の活動家たちの収容所となっていたからです。
アパルトヘイトは有色人種と白人を徹底的に差別した法律であり、人類の負の歴史の一つとされています。
差別の内容は重労働、低賃金から始まり列車やバス、レストランなどの生活圏や居住区の区別、更にはほとんど教育されないに等しい低教育、異なる人種の結婚までもが分けられていたのです。
それに反対した黒人活動家は政治犯として捕まり、このロベン島の収容所に収監されたのです。
アパルトヘイトと戦った人々達の存在
この酷かったアパルトヘイトを撤廃へと導いたリーダー、ネルソン・マンデラもロベン島へと18年間、収監されていたのですが捕まってもなおネルソンの強い意志は変わらずにいました。
そして世界中からこのアパルトヘイトは非難され続けたのをきっかけに1990年にネルソン・マンデラは釈放され、1991年には当時の大統領だったデクラークによってこの法律が撤廃され平和な日々が訪れると思われていましたが、法律的な意味でのアパルトヘイトは無くなりましたが日常的には無くなることがありませんでした。
1994年、やっとのことで全人種による選挙が行われたことによってアパルトヘイトは完全撤廃され、その後なんと第8代大統領にネルソン・マンデラが就任し人種の融和を進めていたのです。
そんな歴史のあるロベン島をユネスコ世界遺産委員会は「人間精神の勝利」の地として1999年に世界遺産に登録されました。
日本からロベン島までのアクセス
ロベン島へ向かうには日本からドバイやロンドン、シンガポールなどで乗り継ぎ、ケープタウンへ向かいます。
そこからケープタウンのビクトリア&アルフレッド・ウォーター・フロントというレジャー施設に向かい、フェリーでおよそ30分でロベン島に到着することができます。
博物館としてのロベン島
現在のロベン島は先ほども記載した通り、ロベン島博物館となっていて島に到着すると元囚人のガイドが島の説明してくれます。
ロベン島では自由行動が許可されていないので刑務所内の見学は以外は大型バスを使っての移動となっています。
ツアーの所要時間は約3時間30分となっており、刑務所の他にもハンセン病患者の隔離施設や精神病院、軍事基地を巡ることができます。
ロベン島の二大見所!
・刑務所
「監獄島」の最大の見所である刑務所は当時の過酷な環境を生で感じ、知ることができる貴重な場所です。
刑務所では第8代大統領ネルソン・マンデラが実際に収容されていた部屋も見ることができます。
独房の中はわずか二畳ほどと狭く、トイレ用のバケツと一枚の毛布しか置かれていません。
その当時の過酷な状況を収監されていた人物から説明を受けるのはとても貴重な体験となることに違いありません。
・サッカー場
以外にもロベン島の刑務所にはサッカー場が併設されています。
何故、併設されているのかと言うと1967年頃に囚人たちが必死の交渉の末に勝ち取ったもので建設されました。
サッカー場は唯一の娯楽施設でこれによって囚人たちはストレスを解消し、囚人だという苦痛から逃れていたそうです。
実はサッカーはストレス解消だけではなくサッカーを通じて人種差別に抗っていたのです。
その後2010年にサッカーワールドカップが南アフリカで開催され開催式にネルソン・マンデラが出席したことも大きな意味があったのです。
豊かな自然にも注目!
ロベン島は刑務所だけではなく、自然も豊かなので多くの動物たちが生息しています。
その種類は132種類の鳥類やレイヨウなど絶滅危惧種や珍しい動植物が住んでいるのでロベン島博物館では自然環境に関する取り組みにも力を入れています。
そんなロベン島のに住んでいる代表格がケープペンギン(アフリカペンギン)です。
一時はタンカーの石油流失事故が起こったことにより生息が危ぶまれていましたが地元の大学生やボランティアによる保護活動のおかげで難を逃れました。
しかし問題はそれだけでは無く、島に生息していないはずの猫が島に来てしまいペンギンの卵を襲う問題が今後の課題となっています。
一度は学びに行ってほしい世界遺産
人類の負の歴史が学べるロベン島は囚人たちによる貴重な話が聞けるとても重要な場所となっています。
ロベン島ではこの悲しい歴史が再び起こらないよう、このような事実があったことを後世に残していく役割を担ってくれています。
是非、この歴史が色濃く残っている世界遺産に行ってみてはいかがでしょうか。