ロンドンといえば、どんな風景を思い浮かべるでしょうか。多くの人が国会議事堂やビッグベンの名前を上げるかもしれません。それでは世界遺産の「ウエストミンスター宮殿、ウエストミンスター大寺院及び聖マーガレット教会」はというと、具体的なイメージが難しいというのが正直なところ。しかし、ロンドンの世界遺産「ウエストミンスター宮殿、ウエストミンスター大寺院及び聖マーガレット教会」は、そのすべてが含まれた、ロンドンを代表する世界遺産なのです。
ロンドンのランドマーク、ウエストミンスター宮殿
まず、ロンドン観光には欠かせない「ウエストミンスター宮殿」。宮殿とはいいながら、現在は英国議会の国会議事堂として使用されている建物です。そのため、世界でもっとも有名な国会議事堂と呼ばれることもあります。
ウエストミンスター宮殿が誕生したのは、11世紀の半ば。その当時は国会議事堂ではなく、王とその一族が生活を送る宮殿でした。そのため、この場所は現在でも「宮殿」と呼ばれています。その後、1529年に王宮が移動、その後、ウエストミンスター宮殿は現在に至るまで国会議事堂として使用されています。
ウエストミンスター宮殿には数多くの物語がありますが、民主主義を語る上で最も有名な清教徒革命のエピソードでしょう。
1624年、国王だったチャールズ1世はスコットランドとの戦争を起こし、さらにその戦費のため多額の税金を国民に課していました。しかし英国議会はこれに反発、議会で国王を弾劾する204条にわたる「大抗議文」を通過させます。これに怒った国王は議員の逮捕を求めて国会に乱入、しかし議長は断固としてこれをはねつけます。これがきっかけで国王と議会の対立が深まり内戦に発展、清教徒革命がはじまりました。6年の戦いの末、国王は敗北、処刑されます。そしてそれがきっかけとなり、現在にいたるまでイギリスの国王がウエストミンスター宮殿の下院議場に入ることは許されなくなりました。
そのほかにも様々なエピソードと歴史のあるウエストミンスター宮殿ですが、現在使われている建物は1860年に再建されたもの。それまでの建物は1834年の火災で焼失しています。
また、ウエストミンスター宮殿の中でももっとも有名な建物が時計塔「ビッグベン」でしょう。この建物は高さ約96メートルと、高層ビルの増えたロンドンでも、屈指の高さを誇っています。ちなみに「ビッグベン」という愛称の由来には諸説あり、時計塔工事の責任者であったベンジャミン・ホールの名前にちなんだという説や、当時人気のあったボクシングのチャンピオンに由来すると言う説などがあり、現在でも議論が戦わされています。また、2012年には女王エリザベス2世の在位60周年を記念して、ビッグベンのある時計塔の名前が「エリザベスタワー」に変更されています。
そんなロンドンのシンボル「ビッグベン」ですが、現在は特別な日をのぞいて鐘を鳴らすことが中止されています。時計塔は修復工事が行われていて、15分ごとになる鐘の音が工事の邪魔になることがその理由で、次にビッグベンの鐘が定時にならされるのは2021年。ロンドンっ子はその日を楽しみにしているそうです。
ロンドンの神秘、ウエストミンスター大寺院と聖マーガレット教会
ウエストミンスター宮殿が議会のシンボルとするのなら、ウエストミンスター大寺院と聖マーガレット教会はイギリス王室のシンボルと呼ぶことができるでしょう。
ウエストミンスター大寺院は国王の戴冠式や、ロイヤルウェディングが行われることで知られる建物です。誕生したのは11世紀。元々は修道院として作られました。その後、13世紀になると大改築が行われ、フランス風の大聖堂が誕生、王室の聖地として様々な儀式に使用されるようになりました。ここで最初に戴冠式が行われたのは11世紀、ウィリアム1世の時代。それから約1000年以上の間、ほとんどの儀式がウエストミンスター大寺院で行われています。一方、聖マーガレット教会が作られたのは12世紀。寺院周辺の人々のための教会として建築されましたそれから何度かの改築や再建などを経て現在に至っています。こちらは上流階級の人々が結婚式を行うことでも知られていて、イギリスの首相だったウィンストン・チャーチルもこの教会で結婚式を行いました。
ウエストミンスター大寺院や聖マーガレット教会見学の見どころは、なんといっても美しいステンドグラス。特にウエストミンスター大寺院のステンドグラスは、第二次世界大戦中にはドイツの爆撃による破壊を避けるため、わざわざ取り外して疎開させたというエピソードが残っています。これら歴史あるステンドグラスはすでに工法が失われたものもあり、現在の技術でも同じ色は出せないものもあるのだといいますので、ウエストミンスター大寺院と聖マーガレット教会を訪れたときはぜひ見ておきたいものと言えるでしょう。
歴史のある街、ロンドンの中でも特に様々な物語やエピソードの多い世界遺産である「ウエストミンスター宮殿、ウエストミンスター大寺院及び聖マーガレット教会」。荘厳な雰囲気は他の場所では味わえないものなので、ロンドンを訪れたときにはぜひ見学したい場所と言えそうです。