アンコールはカンボジアに広がるクメール王朝時代の遺跡群です。有名なアンコールワットのほかにアンコールトムなど60を超える遺跡が世界遺産に登録されています。森の中に打ち捨てられていた遺跡であり、蔦が絡まり、木に侵食された姿や、様々な宗教美術が残っていることでも有名です。
遺跡が点在するアンコール遺跡群
アンコールはカンボジアの北西部にある遺跡群です。9世紀頃から14世紀頃までクメール王朝の発展と共に歩んだ都市の遺跡であり、侵略戦争の結果打ち捨てられた都市でもあります。特徴的なのは主要な宗教が入れ替わりながらもそれぞれの美術品などが残されている点です。クメール王朝は仏教やヒンドゥー教を中心とした統治を行っていて、それぞれの遺跡が仏教を基にしたものやヒンドゥー教を基にしたものが入り混じっているのです。時代による宗教の変遷を見ることが可能で、貴重な美術品が残されているのも特徴です。
世界遺産であると同時に観光地化が進んでいて、遺跡周辺の開発も進んでいます。リゾートホテルなども誕生し、観光資源として生かされている部分もあるのです。カンボジアには長く内戦が続いていた時代があり、国の復興のためにも重要な遺跡となっているのです。
木と蔦が生い茂る遺跡としても有名
アンコール遺跡群は長く忘れられた遺跡であり、100年ほど前にフランスを中心とした保全活動がされるまで放置されていました。そのため、遺跡は自然に侵食される形になり、木や蔦が生い茂り、自然と共存する遺跡として有名になったのです。注意したいのは自然の侵食は今もとまっていないことです。保全のための活動は行われているものの遺跡の数が多く、自然に手を入れるにも様々な手続きが必要になるため姿が変り続けているのです。自然の生命力を感じると共に、建物の巨大さと合わせて人間の力を感じさせる不思議な力の調和を見ることが出来る遺跡になっています。
遺跡の侵食が進めば倒壊する可能性もあるため、見られる時に見ておきたい遺跡の一つでもあります。建物の保存のために木を切れば景観が全く変ってくるからです。
遺跡が朽ちて行く過程を見れるのも特徴に
遺跡や宗教美術など見所が多いアンコールですが、もう一つの側面があります。これは現在進行形で遺跡が朽ちていることです。ポイントになるのが材質です。アンコールの遺跡群はほとんどが砂岩で作られています。砂岩は水分を吸収しやすく、熱の影響で水分の放出や吸収が活発なのが特徴です。そのため、砂岩の中にしみこんだ水が熱で温められると表面が剥離し、柱が徐々に細くなるなど影響を受けます。もともと9世紀頃に立てられた建物もあり、人の手が永く入っていなかったため劣化が進んでいる部分もあります。また、地盤などの沈下で傾いている場所もあります。
数百年、千年単位で石造りの建物が崩れる事もあるという時間の残酷さを感じさせる空間でもあり、良く観察することで人の作ったものの儚さも見ることができるのです。
旅行ツアーも多く、日本からもアクセスしやすいのも魅力
アンコールの特徴に、観光開発が進んでいて、日本からも観光ツアーが組まれていることが挙げられます。5日間で10万円を切るようなツアーも珍しくなく、主要な遺跡を見ながら安全なホテルに泊まって快適に過ごすことも可能なのです。治安も比較的良く、安心して渡航できる地域です。
時差は2時間で、日本時間よりも2時間早くなっています。飛行機に乗って移動するとさを大きく感じやすいものの、半日単位のズレではないため時差ぼけは生じにくい地域になっています。物価が安いのも魅力で、現地でついつい買い物をしすぎてしまう人もいます。格安航空会社を利用している場合は荷物の持ち込み料がきびし目に設定されているため、追加料金などに注意が必要になります。無理に飛行機に持ち込むよりも、日本に国際便で送ってしまった方が安上がりなケースも多くなります。
また、観光ツアーは主要な遺跡をメインに回るため、マイナーな遺跡を見たい場合はオプションプランなどを契約するか、自力で行く算段をつける必要があります。遺跡といっても範囲が非常に広く、数が多いため、全てを回ろうと思えばかなりの時間がかかります。ツアーから外れて行動する場合は下調べが重要になるため、事前のチェックが必須になっています。
まとめ
アンコールは古代クメール王朝の遺跡群で、様々な宗教美術と自然の生命力を感じられるのが特徴です。遺跡はいまなお自然に侵食されていて、一部は崩壊の恐れがあることから立ち入りが出来ないようになっています。安全性の面から立ち入りできる地区が増えていく可能性もあり、同じ姿を見る事は出来ないかもしれないのです。
巨大な遺跡群でありながら放棄されたことや、自然に侵食され崩れていく姿など、文明の儚さを伝える側面もあります。楽しみ方は人それぞれのため、ツアーや個人旅行など様々な方法で足を運んでみるのもおすすめです。